2010年2月13日土曜日

新川達郎のイタリア通信7号~EUの財政問題から考える~

 2月6日土曜日は、当地ブラ市ではカーニバルで、仮面や仮想の姿で、老いも若きも夜中まで遊んでいました。ベネチアの仮面が有名ですが、こちらでも、寓話を題材にした大型の張りぼて人形を、農業地帯らしくトラクターでひいた台車に乗せて来ていました。若者(子供たち)による仮装のダンスグループも近在から集まって、ダンスコンテストさながらです。魔女の衣装、子鬼の装束、豚のきぐるみなど、それぞれに工夫を凝らしていますが、ダンス音楽は今風のラップが多かったように思います。
 さて、ブラ市の話は一休みをさせていただいて、このところのヨーロッパの話題の一つである財政危機について、気になっていましたので、少しだけお話させていただきます。ご承知の通り、ギリシャの財政数値のごまかしに続いて、ポルトガルやスペインの財政危機が伝えられるなかで、それらがEUの経済や通貨の信用に影響を及ぼしはじめています。ユーロ安や各国の株安にもつながっているようです。
 このイタリアも財政事情は決してよいわけではありません。政府の債務総額は、国内総生産の117%に達しようとしています。とはいえ、ベルルスコーニ首相は強気です。先日(2月5日)もインタビューで、イタリアは経済危機を健全に乗り越えつつあり、これまで増税をすることもなく、国民生活や雇用問題に対処できてきたことを強調していました。とはいえ、EU各国の経済問題は、当然、共通市場にあるイタリア経済にも波及しますので、安心してはいられないはずです。
 一方の日本はどうでしょうか。2007年度で国内総生産の117%の政府債務残高を抱えているイタリアと、170%を超えている日本とでは、もちろん事情は違うとしても、どちらも安心してはいられないはずです。日本の新年度予算案は、国債発行が51兆円といわれていますが、財政収入の半分以上を国債で占める状況です。財政規律至上主義はいけないという実体経済面からの議論もありますが、その一方では、そうした財政を必要とするような経済運営とそれに応じた財政運営を考えるという枠踏みは、縮小する経済と社会の将来見通しのもとで、そろそろ卒業する時期かもしれません。
 もちろん一挙にグローバル化した市場経済体制から離脱せよなどと言っているわけではなく、資源問題や環境問題を見据えつつ、将来の衰退を見通した戦略を立てるよい機会なのではないかということを指摘したいのです。EUやBRICsのように拡大を目指す経済体制もありますが、日本は幸か不幸かそうした方法をとらないできました。とすれば、日本の社会経済独自の将来戦略があってもよいのではないでしょうか。