2010年2月8日月曜日

「条例」はどこにあるのか? その6~自治立法の広がりは条例検索の広がり?~

 条例は、自治体の区域内のみで効力を有し、「法令に違反しない限りにおいて」(地方自治法第15条)制定できる自治体独自の法です。1999年の地方分権一括法の成立までは、ややもすると国の法律や政省令(命令)の施行規則・処理準則として法令の一部のように捉えられてきました。これらの条例は、国の所管省庁が「モデル条例」を提示し、それにもとづいて首長部局から条例案が提案されてきました。
 この種の条例案の審査にあたっては、根拠法や近隣自治体や類似自治体の状況が、首長部局から提供されることもありますが、議会ではすでに「モデル条例」が示されてしまっているために、自治体としての創意工夫の余地はあまりなく、審査の内容が条例案自体よりも実施にあたっての意見・要望に比重が置かれます。それ以前に、議会が委員会審査を省略して、実施的な検討をしないことさえあります。「モデル条例」は、議会審議の空洞化をもたらす一因になってきました。
 しかし、実際の自治体活動の現場においては、都市化の進行により、地域固有の問題が発生し、その解決が迫られてきました。国の法律に従って行政を執行しているだけでは、それらの地域課題は解決できず、条例を「自治立法」として考えて、自治体独自の立法による解決を目指す取り組みが展開されています。
 また、地方分権改革の進展と前後して、自治体議会が議員立法によって政策条例を制定したり、議会基本条例などの議会のあり方・位置づけを自ら決めるために、条例を制定しようとしたりする動きがはじまっています。これらの動きも、条例を「自治立法」と考える一環でしょう。
 その証左として、これらの条例のうち、自治基本条例、議会基本条例、人権条例など「自治立法」として特に重要と考えるものには、「前文」が付けられることが増えています。条例については従来、「条例に前文を設ける必要はない。」「法令の一部として,直接の法的効果をもたない精神的・政策的文章を織りこむことは邪道であり,悪趣味以上のものがある。」(山本武『地方公務員のための法制執務の知識』ぎょうせい1999年)とする見解が強かったのですが、あえて特に重要な条例に前文を付けることで、自治体の基本法として位置づけをもたせるようにしています。
 このような「自治立法」の制定こそ、議会独自の権能を発揮する場であり、「議員力」「議会力」が試されるのではないでしょうか。