2010年4月9日金曜日

新川達郎のイタリア通信14号~投票はどうなっている?~

 イタリアの地方自治体の選挙では、自治の政治制度にもとづいた投票方法になっています。イタリアの地方自治体では、首長とその与党の政党グループを選挙で選ぶことになります。たとえば、今回の州政府選挙では、投票用紙は、政党のシンボルマークを同じ大きさの○内で示し、その横に候補者の名前を書く欄を設けてあります。いくつかの政党が支持する知事候補者の名前は、政党グループ名を横書きで何段かにまとめて、その左横に候補者氏名が書いてあり、そこにもマークすることができるようになっています(写真はイタリア内務省が、サンプルとして出している写真で、各級の選挙の違いがお分かりいただけるでしょうか)。
 この投票用紙の書式には、イタリアの選挙制度が大きく関係しています。前にもご紹介したとおり、州政府選挙は比例代表制なのですが、同時に州知事を冠にいただいてそれを支える政党連合のグループが、相互に競争をする形式をとります。投票は、州知事だけに投票することもできますし、支持政党と連携する知事候補者に投票することもできます。また、支持する議員候補者名で投票することもできます。もちろん、ごく少数ですが、支持するある知事への投票をして、その知事とは連携しないで敵対する候補の政党または候補者への投票をする、一つの選挙でのいわゆる交差投票もあります。
 イタリアの投票率の高さについては、場所によっては棄権をした者の氏名を公共の掲示板に張り出すというような方法で、強制に近い選挙をやってきたからとか諸説ありますが、概して従来は高い投票率で知られている国です。とはいえ、90年代以降、少しずつですが投票率も下がってきています。特徴的なのは、EU議会の投票率の低さです。あまり関心をもっていないとはいえ、各界からも問題視されています。国政選挙では、80年代あたりまでは90%以上の投票率を誇っていたのですが(日本の村の選挙みたいですね)、90年代には80%、2000年代には70%台に、落ちてきています。
 地方選挙も同様の傾向にあり、かつての日本のように地方選挙がとくに高い投票率になるということはないようです。正確に言うと投票率の数字と年代は必ずしもあっていないのですが、大まかな傾向は分かっていただけるかと思います。
 さて、このところ地方選挙では、ローマ、ナポリ、トリノといった大都市選挙では、中道左派が強みを発揮しています。もちろん元来勢力基盤があるところではあるのですが、ベルルスコーニ首相の地盤であるミラノを除いては、今これらの大都市では中道左派の市長と議会になっています。とはいえ、右派と左派の得票の差は、思ったほど大きくはありません。外国からみていると散々な評判の現首相が、あるいはその陣営が、強みを発揮するのは、伝統的な保守地盤があるということでしょうか。
 私のまわりのイタリア人有権者たちに言わせると、今のベルルスコーニ首相がなぜ高い人気を誇っているのか、大変腹立たしいようです(ピエモンテ州が現在左派政権であり、スローフード運動が左翼に基盤を置いていたこともあるかもしれませんが)。マスコミの力で高い人気を得ているだけで、プラスチック成型をしたような顔や皮膚、絵に書いて張り付けたような頭髪など、政治家としての資質以前の問題があるのだといっています。もちろん政治家としては、落第点だそうですが、これは何とも私のおつきあいの範囲内の何人かの話ですので、この段落は読み飛ばしてください。
 ともあれ、州政府の選挙戦では、中道右派が、知事候補だけではなく、ベルルスコーニ首相の名前を出して選挙戦を戦っています。これに対して中道左派は州政府の知事候補をシンボルにしています。このあたりも、選挙戦略や政治勢力の体質の違いが表れていて面白いところです。