これまで11回に分けて、例規検索の現状と具体的な方法について、ネットの活用法に絞って考えてきました。
昨今のICT政策の進展はめざましいものがあり、この分野での情報収集の利便性の向上をもたらしました。
けれども、ネット上の情報収集は、今まで書いてきたように問題点があり、発展途上のものです。ネット上の情報は大いに活用すべきですが、同時にその不十分さ、限界を常に心得ている必要があります。
ネット上で先進的な条例を見つけても、条例文だけに飛びつくのではなく、関連情報を収集する必要があります。
そのような関連情報を得るためには、ネット上の情報だけではなく、図書館や議会事務局を活用して、関係する書籍・新聞記事・雑誌論文などを丹念にあたっていく必要があります。専門家の活用も時には必要になります。また実際に条例制定を考えるならば、先行して制定済みの自治体に問い合わせをすることになるでしょう。
そして何より、探してきた情報は担当課はもちろんのこと、広く市民と共有することが当然の務めであり、条例制定を後押しすることにもつながります。
ネット上でいくら面白そうな条例を見つけたとしても、それをパソコンで行うコピー・アンド・ペーストの操作のように、条例文だけを自分の自治体に当てはめることは無理です。仮に条例が成立したとしても、担当課や現場の市民に混乱をもたらすことになりかねません。
これから「自治立法」としての条例の役割・政策効果は、いよいよ大きくなってきます。そうなったとしても条例づくりの基本は、市民の日々の暮らしと自治体活動の現場(立法事実の把握)にあることはいうまでもありません。(了)