2010年3月13日土曜日

新川達郎のイタリア通信11号~ブラ市の地方自治 その2~

  ブラ市には、前回報告申し上げたように、日本と同じように、執行機関と議決機関があり、もちろん、議会が議決機関です。執行機関は、市長ですが、そのほかに6名からなる市執行委員が任命されて、行政の各部門の運営を分担します。環境とか、都市計画、農業、文化、などといった具合です。いわば、市の内閣だと考えていただいていいでしょう。戦前、日本の都市にも大正期あたりまで市参事会制度というのがありましたが、それに近いイメージでしょうか。ただし、委員の正式名称はassesoreで、評議員と訳されますが、伝統的には、補佐役という意味もあります。
 市長は、ブルーナ・シビッレさん、女性です。市長の行政担当分野は、安全と市民参加、都市計画、観光と地域振興、男女機会均等、総務、組織と法令、衛生と保健健康などです。執行委員のなかにおかれる副市長はマルチェロ・ルッソさんで、エコロジー、環境政策、エネルギー政策、農業、産業と中小企業・手工芸を担当しています。そのほか、6人の委員が担当するのは、「家族政策、財政規律、学校教育サービス、職業訓練など」、「公共事業、学校建築」、「文化、人事、自治政策、言語の遺産とピエモンテの伝統の振興」、「道路と交通、周辺集落関係」、「技術革新、スポーツ活動推進、商業と市場、青少年政策、労働政策など」、「委託や入札による公共サービス、戸籍、市民の地位と権利保護、市財産と出納会計」となっています。
 議会は、委員会制をとっており、政策分野ごとに多数の委員会が設けられています。法規委員会、議会規律委員会、道路(土木)委員会、税財政委員会、都市計画委員会、委託サービス委員会、公共事業委員会、社会的扶助委員会、環境委員会、死亡者警察委員会といった具合です。小さな自治体ですが、議会の仕事は、結構多いなというのが印象ですね。なお市長は、議会のメンバーであり議会に行政執行状況を報告する義務を負っています。
 もちろん行政運営は市長と執行委員に委ねられているのですが、法律にもとづいて、5年間の事業計画書を用意する必要があります。これも日本の総合計画制度みたいですね。そこには、5年間(任期に合わせてあるようです)の計画が、経済、雇用、環境、安全、社会福祉、文化、学校、家族、連帯などの項目ごとに、基本方針と行動項目を掲げてあります。数値が入っているわけではないのですが、かなり具体的な目標が言葉で書かれています。
 地方自治の制度は、民主主義の制度として世界中で似たり寄ったりのところと、政治文化や風土によって根本的に違っているところと、両方があって本当に面白いですね。