2010年1月20日水曜日

新川達郎のイタリア通信4号~地方自治はどうなっている?~

 前回は地方分権と保守主義の関係を強調しすぎたかもしれませんが、地方自治が地域の歴史や文化、その風土に依拠したものである以上は、それは当然かもしれないということは確認しておきたいと思います。それはとくに市町村(こちらではcomuneと呼ばれています)のレベルで明らかです。20の州(regione)や110の県(provincia)が中央政府によって設けられ、柔軟に区割りされてきているのに対して、市町村は約8100ありますが、いまだに昔のまま残っているというところが多いのです。
 もちろん、合併や境界変更はありますし、広域的な協力体制はありますが、数百年あるいは千年を超える歴史をもって存続してきた自分たちの町は、自分たちの町のままであり続けよ、というのが基本のようです。もちろんイタリアでも都市化は進み、農村人口は減り続けていますし、特に大都市周辺地域への人口集中は顕著です。最大の市町村であるローマ市は人口270万人余り、最小の町は人口33人といいます。なおローマ市のような大都市には、都市内の自治組織として、municipiと呼ばれる団体があり、ローマには19団体が設けられています。
 市町村の仕事は、基礎的な行政単位として、住民サービスを提供することにあります。たとえば、出生や死亡の届け、諸証明事務、文化事業、市町村道の整備、各種の公共事業、たとえば清掃やコミュニティバスなどのサービスも提供しています。そして市町村自治体警察があることも特徴でしょう。なお、警察組織については、国家警察を含めていろいろな組織があります。
 たとえば在外研究に来て長期滞在する場合に外国人向け居住許可を出すのは、県に置かれた国家警察の一つであるクエストーラ(国家地方警察長官)の役割です。
 日本の地方分権改革では、相変わらず警察の問題は触れられずでしょうか。戦後すぐの自治体警察制度に戻せなどと言うつもりはありませんが、現在の警察の状況を見ていると、国家警察と地方出先機関の一番悪い面が出てきているように思います。もともとは、近代的な警察機構と警察の自治を目指した制度だったのですが、そろそろ限界かもしれません。
 イタリアがよいわけではないのですが、警察こそ分権化してみると、ずいぶん変わるのではないかと思えてなりません。イタリア警察事情については、機会があればあらためて、ご紹介したいと思います。

「条例」はどこにあるのか? その2~市民は条例をどのように知るのか~

 法律が効力を有するには、国会での議決を経て、内閣を経由して奏上がされ、天皇によって公布されることが必要です(国会法第65条など)。天皇による公布手続きを経た後、法律は官報に掲載されますが、最高裁判所は国民が官報を最初に閲覧・購入できる状態になった時に公布があったといえると判示しています。(詳しくは、参議院法制局「法制執務コラム集」
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column020.htm]参照。)
 官報の直近30日分については、独立行政法人国立印刷局が提供している「インターネット版『官報』」で閲覧することができます。
http://kanpou.npb.go.jp/
 また、現在、有効な法令は、総務省行政管理局が提供する「法令データ提供システム」で確認することができます。(ただし、最高裁判所が定める民事訴訟規則、刑事訴訟規則などの最高裁判所規則は収録されていませんので、裁判所のサイトなどでの確認が必要です。)
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxsearch.cgi
 一方、地方自治体の条例・規則の公布・施行については、地方自治法第16条に規定があり、同条第4項で「当該普通地方公共団体の長の署名、施行期日の特例その他条例の公布に関し必要な事項は、条例でこれを定めなければならない。」と定めています。これにもとづいて、各自治体で具体的な手続きを定める「公告式条例」を制定しています。