2010年4月12日月曜日

新川達郎のイタリア通信15号~いよいよ投票日~


 3月28日、29日は、いよいよイタリアの13の州政府選挙の投票日です。このひと月の間に、各政党そして候補は、熱心に選挙運動を進めていました。選挙運動の基本は、テレビやラジオなどの電波メディアと、新聞広告や印刷物、そして政治集会です。インターネットも活用され、政党のものは常設的に、そして立候補者のものはこの時期に集中的に候補者名をアドレスにして、有権者に訴えかけています。
 選挙運動にあたっては、もちろん電波や通信ネットワークも重要ですが、意外に重視されているのが、ポスターの掲示とパンフレット類です。ポスターも、選挙運動期間中になると市町村が掲示場を設けてそこに貼りだすものもありますが、面白いのは、バスの側面や後部に、候補者名や政党名を書いて宣伝している場合があります。また、人が集まる野外市場や休日などには、各政党がそれぞれのテーブルを屋外に設けて、パンフレットを配ったり、呼びかけをしたりしています。ブラ市では、水曜日と金曜日の午前中に町の広場にマーケットができて、あちこちからトラックが集まり、衣料品、家庭用品から、野菜果物、魚、肉、ハム、チーズ、お菓子、生花などがいくつものお店で売り出されます(ちなみに我が家も買い物の多くをこのマーケットに頼っていました)。選挙戦もあと2週間となると、このマーケットのときに合わせて、各政党や候補者の運動員が集まり、パンフレットを配ったり、選挙運動用の小物を配ったりしています(お菓子らしきものが入った小さな包みを配っていました。いわゆる選挙グッズですね)。 パンフレット類と書きましたが、これは、本当にいろんなかたちのものがあります。立派な冊子に近いようなものを配布する政党や候補、、手に取りやすい名刺サイズの4ッ折りくらいにしたものもあります。広げるとA3サイズのものから、A5を折りたたんだものまでいろいろです。形も長方形、細長いもの、正方形に近いものなどいろいろです。色は、各政党のカラーもあるのですが、こちらも候補者の独自色が文字通りあるようです。デザインは、もちろんさまざまで、候補者の写真を大きく載せたもの、なかには上半身裸で、健康そうな様子を誇示しているやや高齢の方もいます。
 宣伝の内容もそれぞれです。政党の主張、候補者の紹介なども一応ありますが、面白いのは、各候補者が、自分の名前を書いてもらうように宣伝している点です。そしてその名前を書いてほしいという宣伝は、もっぱら地元に向けてのものが多いのです。日本の選挙にも地盤という言葉がありますが、比例代表制をとるイタリア州政府選挙でも、地元は大切で、そこで自分の名前をしっかり書いてもらって当選しようというわけです。それもあってか、地元のためになる候補者という、どこかで聞いたことのあるようなフレーズがしばしば出てきます。この地域をこんな地域にする、こんな公共事業をもってくる、新しい施設をつくる、鉄道や道路の整備をするといった具合です。
 私が住んでいるブラ市は、ピエモンテ州のクネオ県にありますが、旧郡の単位でいうとランゲとロエロに挟まれた地域です。小都市が多い農村部ですので、交通基盤や産業施設などの整備、また自然環境を守るといった方針が多くなるようです。そこで候補者は、その出身地のためになる候補という意味を込めて、あれこれの政策(利益誘導策)を示して、「ランゲのために」私を選んでほしいといったフレーズを多用することになります。そして、パンフレットには、投票用紙の書き方を示して、自分の政党のシンボルにマークをするように、またその横に個人名を書くようになっているのですが、自分の名前を記入して、こう書いてくれとしています。
 さて、この選挙結果はどうなるのでしょうか。(今回の投票用紙のサンプル【画像はクリックすると拡大表示します】は、エミリアロマーニャ州の保守系候補のサイトからとってきました。前回のものと違って、政党のマークに‘ばってん’が入っていること、その横に名前を書いていることがおわかりになるでしょうか。‘ばってん’をすると、その政党を選んだことになります。そしてその横の記入欄に個人名を書くとそのひとの得票にもなり、ご本人は選出のチャンスが高まります。)